03
向かうは医務室。
ドクターいるかな?あぁ、きっとまたぐちぐちと愚痴言われるんだろうなー。
医務室の扉の前に立ち、深呼吸をする。心臓がバクバクいってる。言わない訳にはいかない。旅路で特に問題はなかったけど……。自分のお腹を見下ろす。
この子に何かあったら私、きっと……。
「失礼しまーす」
「あぁ?また怪我したのか?てめぇら良い加減に……First name?」
クルーと間違えたらしいドクターが振り返り私を見ると、まるでお化けでも見たかのような目を見開いた。
「ドクター、お久しぶりです。怪我はしてないですよ」
「戻ったのか?いや、いつ帰った?」
「今、さっきです。ただいま、戻りました」
「ははっ、こりゃ驚いた。よく帰ったな、First name。おかえり」
おかえり、その言葉が嬉しい。私の頬は自然と緩んでいった。
「それにしても見違えたな」
「そうですか?」
「あぁ、髪が伸びたな。いや、それだけじゃないか?もう、その格好してても男にゃあ見えねぇ。女らしくなったな」
「……」
女らしく、か。
「挨拶は済んだのか?」
まぁ、座れやと促され診察用の丸椅子に座る。薬の匂いにドクターの渋い煙草の香りが混じってる。あぁ、懐かしい匂いだ。
「白ひげとマルコ隊長には一応、他はまだです。何やら宴の準備も始まってしまったみたいで……」
「そうか。で、どうした?見たところ怪我はないみたいだが?」
「あ、はい……」
そうだ。ここに来たんだから、何かあったと思うだろう。
「診察をお願いします」
「診察?」
ドクターは医師の眼差しで私の体を眺めた。
「私、妊娠してるんです」
ドクターの指から、するりと煙草が落ちた。[ 283/350 ][*prev] [next#]
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