02
呼吸器をつけられ点滴をしているその姿は痛々しかった。たった一年で、白ひげは随分歳をとったらしい。どんなに力があっても、病や寿命には……。
「旅の話をゆっくり聞きたいところだが……」
「え」
白ひげの視線の先には懐かしい赤黄緑。
「グララララ、行ってこい」
「レッド!イエロー!グリーン!」
「First name!」
私は三人に向かって走り出し、三人は私に向かって走り出し、そして互いを抱き締め合った。
「First name!よく戻った!」
「この馬鹿野郎!心配したんだかんな!」
「First nameちゃん!First nameちゃん!」
「うぅうううう、ただいまぁ!」
「おかえり!」
どうしよう、嬉しい、嬉しい、嬉しい。あぁ、帰ってきて良かったんだ。良かった、帰る場所あったんだ。
「グララララ、娘の帰還だ!宴だぁあああ!」
白ひげの一声で、一瞬にして船はお祭り騒ぎになった。
「First name、お前今まで……」
「イエロー、聞きたいことは俺も沢山ある。だけど、その前に宴の準備だ」
「そうだよ。あ、First nameちゃんはゆっくり休んで。長旅で疲れたでしょ?部屋はそのままにしてあるから」
「ありがとう、そうする」
わいわい騒ぐ三色の背中に帰って来た実感が湧く。船内の天井を仰いだ。懐かしい。船内は何も変わってないな。白ひげに会った次に行こうと思っていた場所へと、ゆっくりと踏み締めるように足を向けた。
「First name、ちょっと良いかい?」
「マルコ隊長……」
角を曲がったところでマルコが壁に背をついて腕を組んでいた。
「どうかしましたか?」
「……すまなかったねい」
「え、何がですか?」
「お前を責めた」
「……ッ」
「俺はお前のことを……」
「あはは、大丈夫ですよ。もう忘れました、隊長」
聞きたくも思い出したくもなくて、遮るように笑った。それに、もう今更悔やんでも仕方が無いことが多すぎて……。
「First name、サッチは……」
「あ、ごめんなさい隊長。私、ちょっと行かなきゃいけないところがありますので」
「な!待てよい!」
逃げた。あぁ、帰って来たってことは、ついに知ってしまうとは思っていたけど、ちょっと、もう少し待って。もう少し、帰って来たことを喜ばせて。[ 282/350 ][*prev] [next#]
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