06
もっと長い一日になると思っていたのに、終わってしまえば呆気なかった。
砂が舞うはずだった空は今、涙のせいで霞んでしまっている。ねぇ、それは歓喜の涙?空はいったい誰のために泣いてるの?
不思議と私の頬は濡れていなかった。取り乱してもいない。何故だろう、終わる前までは荒んでいたというのに。今では凪のような静けさ。
「あぁ」
それでも溜め息のように零した声は震えていた。
空に突き付けられ、地に堕ちた彼。
「……ッ」
クロコダイルさん、クロコダイルさん、クロコダイルさん!
今すぐにも風になって、彼の元へ飛んで行きたかった。なのに、どうして?
「どうしてよ……ッ」
動かない体。動かない、動かないよ。どうして、助けなきゃ、助けなきゃ。今、助ければ、この先ずっと一緒にいられるかもしれないのに。
なのに、私の体は動かなかった。海軍に取り囲まれる彼を、ただただ見下ろすことしかできなかった。
そんな自分をきっと、これから一生恨むだろう。
「秘密犯罪会社バロックワークス社社長、王下七武海海賊サー・クロコダイル。世界政府直下、海軍本部の名のもとに、あなたから敵船拿捕許可状及び、あなたの持つ政府における全ての称号と権利を剥奪します」
地位?名声?この世の全て?そんなもの私は最初からいらなかった。ただ、愛が欲しかったの。
空っぽのあなたでも、あなたが、あなたなら、私は、あなたを愛してる。
終焉。[ 276/350 ][*prev] [next#]
[目次]
[栞]