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05

狂気が渦巻いていた。見下ろす世界はなんて醜いのだろうか。でも、あの世界の人間に比べればまだましなのかもしれない。

私は時計台の天辺から地上を見下ろしていた。まさに高みの見物。神にでもなったつもりかと、私は自嘲する。


「ねぇ、クロコダイルさん。どういうつもりであんなこと言ったの?」


いまさら遅い問い掛けに返事など返ってくるわけはなかった。

ルフィが干からびて落ちて行った後、私たちは先に行ったロビンのあとを追った。


「First name」

「はい?」

「……アルバーナから離れていろ」

「え」

「爆風に巻き込まれて飛ばされても知らねえぜ?」


ふざけて言ってるような口調の彼の瞳は反対に冗談の欠片も映してはいなかった。


「クロコダイルさん、最後まで傍にいさせてくれないんですか?」


私の言葉に一瞬目を見開いた彼は次の瞬間、柔らかい笑みを浮かべ私の方へ手を伸ばした。それに抵抗する理由なんて微塵もない私はされるがままに彼を受け入れる。

彼の手が私の方後頭部に添えられそのまま彼に引き寄せられる。そして、一瞬触れた唇。


「悪ぃな」


彼の言葉に目を見開いた時にはもうそこに彼の姿はなかった。


「行かないで、クロコダイルさん」


これが最期だとでもいうような、優しい口付け。どうしてだろう。頬を伝うこれは何?


「クロコダイルさん!」


ねぇ、もう一度私の名前を呼んで。もう一度その腕で抱き締めて。

一度で良いから、愛を囁いて。


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