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04

あぁ、血の匂いだ。真っ赤な血の匂い。いつから血を見ても平気でいられるようになったんだっけ?いつから血の匂いを嗅いでも、戻さなくなったんだっけ?


「弱ぇってのは、罪なもんだ」

「……そうですね」


見上げた彼の零した言葉に私は無意識に応えていた。

弱いのは罪だ。弱いから何一つ守れない。強ければ、あの時、私がもっと強ければ……。過ぎてしまった過去がまだ私の心を縛る。


「クハハハッ!面白えことになったな!」


彼の笑い声に視線を下ろせばコーザがいつの間にやら登場していた。


「ビビ!この国の雨を奪ったのは誰なんだ!」

「何もかも……」

「俺さ!コーザ。お前たちが国王の仕業だと思っていたこと全て、我が社の仕掛けた罠だ。お前たちはこの二年間面白いように踊ってくれた。お前は、この事実を知らねぇ方が幸せに死ねただろうに」


きっと彼にとっては長い二年間だっただろう。何を想ってこの二年間を過ごしていたのだろう。結局、彼は何を目指し、何が欲しかったのだろう。目の前で流れゆく絵に私は傍観者になっていた。あぁ、そうそうそんなこと言ってたなとか、こんな流れだったなとか、漫画で読んでた頃は、彼の登場シーンの多さや、言葉一つ一つに胸をときめかせていたというのに。


「知ってたっていう顔ね」

「え?」

「ねぇ、風使いさん?いえ、迷い子さん。あなたは、いったいどこまで先の未来を知っているのかしら?」

「……正直、あと一年もありませんよ」

「……」

「私の知識なんて、過去も未来も中途半端なものばっかり。知っていて変えられた未来もないし、知っていて得した過去もないし、迷い子なんて、ただの迷子」


世界を渡って迷子だなんて、なんて壮大な迷子なんだろう。誰か見つけてくれるのかな?あぁ、もう見つけてもらったか。私はもう迷子なんかじゃない。帰る場所もある。居場所もある。


「全てを救おうなんて甘っちょろいお前の考えが、結局お前の大好きな国民共を皆殺しにする結果を招いた」


そうだよ。全てを救うなんて無理。未来を変えようなん大それたこと考えるのは馬鹿だ。


「お前に国は救えない」


私は何も変えられない。クロコダイルさんの言葉がまるで私に諭しているかのようだった。

誰が悪いわけじゃない。ビビからしたら、この国の人からしたら、悪は彼だろうけど。

私は空を見上げた。誰が悪いわけじゃない。今はこういう世の中なんだ。前にもそんな風に思ったことがあった。私が悪いんじゃない。私に合わない世の中が悪いんだって。あぁ、なんだやっぱり、私、成長してないじゃん。

空に小さな光が見えた。


「あ」


正義は、やっぱり光とともに現れるんだ。


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