03
物騒なことをお姫様が言っていた。それを私は彼の隣で眺めている。
「だって。どうするんですか?」
「クハハハッ……させるわけねぇだろ」
「ですよねー」
宮殿を爆破するなんて、こんな歴史ある素敵な建物勿体無い。
「物騒なマネしてくれるじゃねぇか、ミス・ウェンズデー。ここは直、俺の家になるんだぜ?」
嘘。クロコダイルさんは、こんな建物になんか本当は興味ないでしょ?あなたはそんなものに執着する小物じゃないもの。
「クロコダイル!」
ビビの怒りの眼差しが私には他人事のように遠く感じた。こんなにも人を憎む目は冷たいのだろうか。私も……。
「フフフ、何やら門の外が騒がしいわね」
「あ、ミス・オールサンデー」
私は、ふわりと風になり彼女の隣に舞い降りた。
「あら、あなたも来たの?風使いさん」
「うん、クロコダイルさんが来いって」
「……そう」
コブラさんは杭で壁に磔られていた。まるでキリストのようだ。絵で見るのとは違って、実際に杭が刺さっている姿は痛々しい。痛々しいなんて言葉で収まらないくらい残虐性を感じた。
「君は……」
「コブラさん、またお茶したかったな」
場違いなことを言った言葉は本音だった。どうして、この世には正義と悪があるのだろう。どちらにも、どちらなりの理由があるのに、相入れないのは仕方が無いのに、仕方が無いのに、それが人間なのだ。
「ルフィさんはどこ!?何であんたがここにいるのよ!」
「奴なら死んだと言ったろ?」
「嘘よ!ルフィさんがお前なんかに殺される筈がない!」
ビビと私の温度差が恐ろしい。知っている内容だからといって、ここまで冷静にいられるとは。いや、ある意味冷静とはかけ離れているか?
「プルトンは何処にある」
でた、プルトン。秘密兵器?古代兵器?あぁ、そんなものあるから。無意識に握り締め拳。
「……ッ」
「ミス・オールサンデー?」
彼女を見れば手から真っ赤な血が滲み出ていた。
「あ!」
私が驚いて目を見開くのと同時に勢い良く門が開いた。
「心配無用よ、風使いさん」
「でも」
私は彼女の手から視線を外し、門から現れた人間を見据えた。ロビンの手を傷付けるなんて。
「クロコダイルさん、私が……」
「下がれ、虫ケラだ」
興味なさ気に言った彼に向かってツメゲリ部隊と呼ばれた四人は飛び掛っていった。彼にしてみれば本当に虫ケラに違いない彼らに背筋がゾクリとした。
「狂気だ」
零した私の声は砂とともに風に飛ばされた。
弱い、私から見ても彼らは弱かった。ただ怒りに支配された狂気は恐ろしかった。国のため、国にため、国のため、何かのために自分すら捨ててしまう。その感情、覚悟が恐ろしかった。
「てめぇも、他人の為に死ぬクチか……」
戦うことすらしない彼は、誰かの為に死を選ぶ人間の弱さを咎めているかのようだった。[ 273/350 ][*prev] [next#]
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