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01

心配してくれてるかな。自分から消えといて都合の良いことを考えてる。胸いっぱいに空気を吸い込めば砂の香りが包み込んでくれた気がした。この国は良い。何処にいても砂の香りがするから。まるで、何処にいても彼が傍にいるようで安心する。


「おい、てめぇどこに座ってる」

「スモーカーさんのビローアバイクの後ろ」

「そうか、そんなに捕まりてぇか」

「あはは、それは勘弁して下さい」

「……てめぇは何がしてぇんだ」


身の丈ほどもある十手を抜こうとしていたスモーカーさんは溜め息を吐きながらそれを戻した。


「正義とか、はっ、アホらし」

「喧嘩売ってんのか」

「追放されたって、何?」

「……お前、仲間殺して逃げたらしいじゃねぇか」

「は?」


何を言ってるんだこの人は。


「身に覚えがないようだな」

「当たり前。私は仲間を、家族を殺したりしない」

「じゃあ、何故ここにいる。よりによってクロコダイルなんかと」


何故って、そんなの……。逃げた。確かにそこには語弊はないかもしれない。だって私はあの船に居辛くなって。逃げたんだ。どうしよう、クロコダイルさんが居なくなったら私、どうしたら。帰る場所、ない?


「おい、何泣きそうになってんだよ面倒くせぇ」

「泣いてませんから」

「はっ、口だけは達者だな」

「うるさい!海軍なんて嫌いだ!イコールお前も嫌だ!クロコダイルさんは、私が泣きそうになったら……ッ」


「どうした?」って、ぶっきらぼうだけど心配そうに優しく声を掛けてくれるもん。


「お前……、あぁ、なるほど。そういう関係か」


妙に納得したように頷いたスモーカーを睨み、私がバイクから降りようと体を浮かせた。しかし雲に捕まった。


「ちょっ、離っ……ッ!」


振り向きざまに迫った顔に言葉を詰まらせる。全身から拒絶が湧き上がる。それに反応したかのように黒い風が私を包み込んだ。


「触るな、近付くな、殺すぞ」


言い放つなり私は風になった。会いたい。クロコダイルさんに会いたい。

馬鹿だ。私、馬鹿だ。どうして離れたんだろう。


「あぁ、もう!」


本当、どうして良いのか分からない一日だ。心中ごちゃごちゃしてて、自分が何処にいて、何をすれば良いか分からない。

いっそのこと風の流れるまま飛ばされていきたい。結局、現実から逃げることしか考えられない自分が滑稽でしかたがなかった。


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