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06

二度目に入ったその部屋は、やっぱり周りを観察する余裕もなくて、ただひたすら大きなベッドの上で胡座をかいている大きな人を見つめることしかできなかった。


「どうした?」


娘の一大事に逸早く気付くとはさすが親父。余計に娘ポジションに落ち着きたくなくなる。


「なんだ?ナース達んとこ行って服貰ったんじゃねぇのか?」


あー、何ていうかその予定だったみたいなんですけど思った以上に私、女のくせに女性恐怖症みたいなんですよ。

言葉を返せず無言を決め込み俯く私に白ひげはまた手を差し伸べた。すでに私は、その手を拒むことのできない体になっているらしく素直に手を重ねる。

一瞬、さっきマルコに伸ばした手が届かなかったことを思い出したが、この手は私を拒まない。むしろ伸ばしてくれるから安心する。

そのまま、ひょいっと抱き上げられさっきみたいに膝に乗せられた。

重くないかな?とか思ったけど、これだけ体格差があれば平気だろうという結果になり体を委ねた。

白ひげは何も言わない。それが逆に心地好くて、ただ白ひげが酒を喉に流し込む動作をひたすら眺めていた。

私は何て言ってほしいんだろ?何て言いたいんだろう。

分からない。分からないけど、この時間を幸せだと思うのだけは分かる。


「白ひげ」

「グララララ、親父とは呼んでくれねぇようだな」

「はい、嫁希望ですから」

「まぁ、好きに呼べばいい」

「……」

「で、何か話す気になったか?」

「私、女のくせに女性恐怖症みたい、です」



本当は恐怖症なんて大それたものじゃないけど。本当はただ私が臆病なだけ。

真剣に言ったのにグララララって爆笑された。心外だ、First name心外だ。


「白ひげ知らないの?女って怖いんだよ?ちょー陰険で、ちょー性格悪くて二重人格で、しかも凶暴なんだよ?」


真面目に言ってんのに、また笑われたから溜め息を吐いたら頭を撫でられた。

な、何事!?


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