20
レインディナーズの前に転がる人間なんて見向きもしないまま、私は彼のコートを相変わらず掴んでピラミッドをモチーフにしたその建物の上に乗るバナナワニを見上げていた。
「雑魚が、この俺から逃げられると思うな」
「放っておけば?」
「黙れ、今までも全員殺してきたんだ。俺をコケにしやがった奴ぁな」
ロビンの言葉に耳を貸すこともせず、彼は砂になり私の手からすり抜けて行った。
「風使いさん、いいの?」
「良いも何も、私には何もできないですし、何かをする気もありません」
突如揺れた足元。地響きとともにレインディナーズに続く掛け橋が崩れ落ちていった。サンジの姿を探したが見つけることはできなかった。もう中へ入っちゃったのかな。
「抗おうとは思わないの?」
「何からですか?」
「あなたが知る未来から」
「……」
抗ったら何かを変えられるのだろうか。ううん、それが無理だと充分思い知らされたじゃないか。
抗いたいよ、変えたいよ、でも……。
「何かを変えたいなら、あなた自身が変わらないと不可能よ」
「あはは、これ以上強くなれと?」
何も知らないくせに。これ以上強くなるなんて私には無理だよ。
「何処へ?」
「高みの見物」
風になる私に彼女は言った。聞こえなかったことにしよう。[ 270/350 ][*prev] [next#]
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