×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -
18

七時を回った。ユートピア作戦開始。ユートピア、それは理想郷。ねぇ、クロコダイルさん。あなたはどんな理想郷を求めているの?ねぇ、そこに私はいる?

理想は所詮理想。誰?そんな可哀想なことを言ったのは。可哀想。きっと、あなたには夢も希望もなかったんだね。

彼の高笑いが部屋に響いた。夢を、理想を求めた男の高笑いが。人を踏み倒し、その上に立ち、高みを目指す。ねぇ、どっちが可哀想な人なんだろう。


「どうだ、気にいったかミス・ウェンズデー。君も中程に参加していた作戦が今花開いた。耳を澄ませばアラバスタの唸り声が聞こえてきそうだ」


あぁ、今まさに命が消えていっているんだろう。命の消える音なんて私に聞こえない。良かった、聴こえなくて。


「おい、風来。何故お前がここにいる」

「やぁやぁ、スモーカーさん。相変わらず素敵な胸筋剥き出しですね」

「ふざけてんじゃねぇ。……船を追放されたっていう噂はどうやら嘘じゃなかったみたいだな」

「は?」

「それでクロコダイルの元に来たのか。四皇のクルーも堕ちたな」


握り締めた拳を檻に叩きつけた。


「黙れ、腐れ正義が。お前らがいったい私に何をしてくれた?お前らが私を助けてくれたか?あの時、私は!」

「……何の事だ?」


真っ暗な海の底。もがいても、もがいても、手を伸ばしても、私の手は水を切るだけだった。

クロコダイルさんの繰り返される「守るんだ」という言葉が私の胸まで抉った。

守るなんて口にする奴は何も守れない。


「泣かせるじゃねぇか。国を想う気持ちが国を滅ぼすんだ」

「外道って言葉はこいつにピッタリだな」


ゾロが吐いた言葉なんてクロコダイルさんには届かない。長年、この日のために費やした時間を思い返すのに、浸っている彼には。


「何故、俺がここまでしてこの国を手に入れたいかわかるか?ミス・ウェンズデー」

「あんたの腐った頭の中なんてわかるもんか!」

「はっ、口の悪い王女だな」


楽しそうに嗤う彼にちょっとムッとする。彼の瞳に映るビビを消したくなる。

あぁ、私、嫉妬してる。

傍観していたのに、嫉妬している自分に自嘲する。滑稽でしょ?私。蚊帳の外なのに。誰も私なんて見てないのに。私、私。


[ 268/350 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]