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17

黒い風が秘密地下を支配した。ロビンは眉を顰めた。この風、あの子?背筋を震わせる冷たい闇のような力に、ロビンは動けずにいた。


「何、してんの?」


細い、それでいて威圧的な声が静寂を破った。誰もがその声の主に言葉を失う。


「ねぇ、聞いてる?お姫様。今、何した」


風圧に羽交い締めにされたビビは声を出せなかった。恐怖。自分はここで死ぬ。そう一瞬にして死を突き付けられた。


「おい、馬鹿。落ち着け」

「あ、クロコダイルさん。首がある。怖ぇえ」

「馬鹿が、俺があんなんで死ぬわけねぇだろ馬鹿」

「馬鹿って三回言った。酷いです」

「馬鹿に向って馬鹿って言って何が悪い」

「あ、また」


普段と変わらずクロコダイルと話す姿にロビンは呼吸をすることを思い出した。恐ろしい力。忘れていたつもりじゃないけど、あの子、あの白ひげのクルーなのね。もしかしたら、ここにいる誰よりも……。


「あ、ミス・オールサンデー。おかえりなさい」


お姫様を呆気なく離した彼女は、いつもと変わらない調子で私に「おかえりなさい」なんて言う。いつしか当たり前になっていたそれも今日までだと思うと何だかおかしな気分になった。


「えぇ、それにしても懐かしい姿ね」

「えへ、やっぱ一番落ち着きますね」


それは彼女が白ひげの元にいたころの姿。男装ともとれるその姿は以前よりも女が表れていた。もう隠しきれないだろう。


「荷作りは?」

「え、これだけですよ?」

「……そう」

「私は海賊です。身一つで何処にだっていける身軽な人間ですから」


そう言った彼女は誰よりも心に重たいもの積み重ねていっているように見えた。


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