12
ゆらゆらと揺れる3を眺めながらMr.3の後ろを付いて歩く。分かった。今が時系列のどこか。分かってしまった。本当は心が今にも壊れてしまいそうな程、真っ暗な感情で渦巻いている。その感情が殺意だとか憎しみだとか、そんなの分からないけど、そんな狂気的な感情よりもどちらかというならば……。
「着いたガネ」
「そうガネ」
「んな!真似するなガネ!」
Mr.3の突っ込みに瞠目する。懐かしさがじんわりと広がった。
懐かしい。よくマルコとやっていたやり取り。そうか、きっと戻る時期が来たんだ。思ったよりも、その事実はスッと呑み込めた。
私は、この戦いで何かを変えることなんてできない。私は、何もできない。私は……。
「そのユートピア作戦、ちょっと待って欲しいガネ」
「あ、こら……げ」
黒いオーラを背負った3が勝手に乗り込みやがった。私は制止するもMr.3の隣に立ってしまいMr.3と一緒に皆の視線を集める羽目になってしまった。
「風使いさん?」
ロビンが面白そうに首を傾げた。ちょっとロビン全然面白い状況じゃないからね。見てよ、クロコダイルさんの恐ろしい負のオーラを。否、怖すぎてクロコダイルさんの顔は見えないんだけどね。肌に刺さるようなこの感覚はきっと間違いなんかじゃないと思うんだガネ!
「あはっ、はは、侵入者連れて来ましたー……なんて」
「な!話が違うガネ!」
乾いた笑いを浮かべたら3が噛み付いてきた。ちょっと腕を掴むな。あんた蝋人間だから何かネチョって感じなんだよ!
「別に私は了承したなんて言った覚えないけど?」
「んな!貴様!」
「ちょっ、こんの3!離せ!3」
「3言うなガネ」
「煩い!変態ヘアー!」
「変たっ!もう怒ったガネ。このドルドルの実の能力で君も私の蝋人形のコレクションの一つに……」
「う」
目が変態だ。変態眼鏡だ。
「Mr.3!」
突如、秘密地下に響き渡った彼の怒号。私は、ハッとして彼を見た。今日初の彼の顔は想像を遥かに越えて怒りに満ちていた。
「その手を離せ」
抑揚のない言葉で言ったクロコダイル。それが余計に恐怖を煽った。
「First name」
「あ、はい」
「部屋に戻れ」
「え」
「聞こえなかったか?」
それだけで充分だった。私は風になり、その場を去った。否、逃げ出した。
怒らせちゃった。どうしよう。また、怒らせちゃった。
風になっても滲むように出てくる涙が吹き飛んではくれなかった。
あー、またか。[ 262/350 ][*prev] [next#]
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