09
チョッパーに誰にも言わないようにと脅、約束して私は麦わら一味の船を降りた。帰り際、ビビと視線が重なったけど気付かないふりをして私は視線を逸らした。
きっとビビは私の正体を知っているだろう。でも、あの子も抜けてるからなー。風に乗りながら一人苦笑した。
「ただいまー」
「早かったな」
「そうですか?」
葉巻を咥えてソファーに座っていた隣に腰を下ろした。なんだか、どっと疲れが出た気がする。残りの数日もこんな感じなのかな?
「弟には会えたか?」
「はい」
肩に腕を回してきた彼に、そのまま寄りかかる。あぁ、やっぱりクロコダイルさんの腕の中が一番心地良いや。
「そりゃあ、良かったな」
「え」
「あ?何だよ」
「いえ、別に」
驚いて見上げた顔を下ろした。良かったななんて言われるとは思わなくて。私とクロコダイルさんの関係も変わったんだなと染み染み思う。
「どうした?」
「んー、外の世界は疲れるなーなんて」
一生あなたの鳥籠の中で生きたいだなんて、そんな我儘叶うわけないのに。
「お前は本当に海賊に向いてないな」
「そんなこと、ないですよ」
あの高笑いを聞いたらクロコダイルさんの考えもきっと変わるだろう。
「けっこう私も海賊やってますよ」
あの頃の私から考えられないような私が形成された。誰が想像できただろうか。誰が創造しただろうか。
「クロコダイルさん」
「あ?」
「寝てれば終わるんですよね?」
「……あぁ」
だったら寝ていたいななんて思ったり。できれば、あなたの腕に抱かれたまま眠って、あなたの腕の中で朝を迎えたいななんて。
駄目ですか?[ 259/350 ][*prev] [next#]
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