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- ナノ -
06

傷付けたのは俺だった。別に俺が護るとかそんなことを考えていたわけじゃねぇ。仮にもこいつは白ひげのクルーだ。護るに値する奴じゃねぇ。大抵の奴なら一人で十分だろう。

ただ、自分が傷付けるとは思わなかった。今更だろうか。確かに今まで散々傷付けた。でも、何となく心のどこかでもうないだろうなんて思っていたのに。今回は最悪な傷付け方をしたのだ。

今更遅いのかもしれないが、無意識に右手の指が涙を拭うかのように目元をしきりに擦っている。

覚えている。恐怖で涙したこいつの顔を。覚えている。恐怖で俺に助けを求めていた声を。覚えている。この身体がこいつに刻んだことを。

必死に俺の名を呼んでいた。きっと誰に抱かれているのか分からなくなっていたのだろう。きっと、知らない誰かに犯されたと思ったのだろう。そんな記憶を刻みたくなかった。自分だけを知っていて欲しかった。


「……ッ、ん……」

「First name?」


微かに声がした。顔を覗き込めば、うっすらと目を開いた。黒い瞳は、きょろきょろと何かを探すように彷徨い、やがて視線が俺に止まった。


「クロコダイル、さん?」

「……あぁ」

「あ、あっ、あぁあああああ!」


First nameは拒むように両腕で顔を覆い悲痛な叫び声をあげた。


「ごめんなさい!ごめんなさい!お願い!お願い!……ッ、捨てないで!捨てないでぇ!」


あぁ、罪悪感なんて持たなくていいのに。悪いのは俺なのに。何でお前はそんなに必死に、捨てられまいと俺に縋りつくんだ。

お前を傷付けたのはこの俺なのに。


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