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正しい段階を踏まずに迎えるこの日が、こんなにも絶望的な日だとは思いもしなかった。

この世界に来て私は歳をとった。成人もした。そうだよ、こんなことになることだって想像できたじゃないか。

相手が漫画の世界の人間だからだなんて思ってた?そんな、五年以上もこの世界で生きていて、もうこの世界の人間になった気でいて、まだ心のどこかで否定的な感情があったってこと?

そんな馬鹿なことがある?

あはは、笑えない。笑えないよ。

水槽の中で優雅に泳ぐバナナワニを視線で追いながら、瞳から涙を流している。


「どうしたら良いのかな」


誰も答えてはくれないのに、私は問いかけた。


「ねぇ、私、どうしたら良いの……ッ」


声を圧し殺して泣いた。どうか、朝がきたら何もなかったことに。そう願って目を閉じたけど、一睡もできぬまま砂漠の夜が明けた。

水槽に注ぐ朝日は眩しい。なのに、私の目の前は真っ暗だ。そっとお腹に手を添えた。


「……」


何も感じない。何も感じないよ?私の勘違いだったのかもしれない。気が動転していたんだ。だって、何も感じないもん。何も、変わらないもん。

気のせいだった。そう思い込んだら眠気の波が襲ってきた。あぁ、良かった。


「い……おい、起きろ。いつまで寝てんだお前は」

「ん……クロコダイル、さん?」

「寝過ぎだ」


怠い体を起き上がらせれば、ふらりと体が揺れた。あぁ、まだ寝足りない。


「まだ具合悪いのか?」

「ん、大丈夫ですよ」


心配させちゃいけない。無理矢理笑顔を作れば疑わし気な顔をされた。

どきりとする。一瞬忘れていたことを思い出し、さらに嫌な感じになる。これだけは知られてはいけない。


「あはは、お腹空いちゃいました」

「……たく、お前は寝るか食うかしか頭にねぇのか」

「むぅ、そんなことないっすよー」


何事もなく、その日が来るまで過ごしたい。そんな願いは叶わないのだろうか。


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