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誰が言った言葉かなんて忘れた。漫画で知ったのかもしれないし、小説で読んだのかもしれない。はたまた、すれ違う人混みの中で聞いたのかもしれない。

ただ、気付いたら知っていたその言葉は、私の耳からも脳裏からも離れることはなかった。

心配してくれるのは嬉しいけど、そんな彼の態度に慣れてないせいか居心地が悪く、後ろめたい気持ちを抱えながら私は彼の部屋を後にした。

まだ胸の辺りがもやもやしていてすっきりしない。さらに言えば口の中が気持ち悪い。自室に戻り、口をゆすいで一眠りしよう。そう考えながら廊下を歩いていれば、先からロビンがやって来ていた。

敏感なロビンなら、一目見て私の異変に気付くだろう。何故だかそれはまずいと思い早く部屋に入ってしまおうと足を速めたが一歩遅かった。

にょきっと生えてきたロビンの手に捕まってしまった。襟首を掴まれたため「ぐえっ」て声が出てしまった。また吐くかと思った。


「風使いさん?どうかしたのかしら?」

「いえ、べつに」

「そう。そんなこと言える顔色には見えないけど」


ほら、やっぱり。さすがロビン。あなたの観察力は尊敬に値するよ。


「ちょっと気持ち悪くて。部屋で休めば大丈夫だと思うから」


ロビンは何やら探るように私の目をじっと見てきた。嘘は言っていないのに疚しい気持ちになるのは何故だろう。


「そう。ボスはこのことを?」

「知ってるよ」

「だったら良いわ。ゆっくり休んで」


ロビンはすれ違いざまに私の肩に手を置き、ヒールを鳴らしながら行ってしまった。安堵の溜め息が出る。さっきからどうしたと言うんだ私は。何でこんなに変な気持ちになるんだろう。

その理由が分かったのは、トイレの便座に座った時だった。

あ、れ?

便座に座ったまま頭を抱えた。自分で気付いてしまったことが怖ろしすぎて、血の気が引いた。背中から、じんわりと冷汗が滲み出てくる。


「嘘……」


生理、きてない。いつから?いつからきてない?分からない。分からないよ。頭の中が、ぐちゃぐちゃになった。

誰か嘘だと言って。あぁ、神様。嘘だと、冗談だと言って下さい。

そんな、どうして、こんな時に。自分の体のことなのに怖くて怖くて、また吐気が込み上げてきた。


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