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14

帰って来た私を見て、彼は目を見開いた。クロコダイルの言葉を無くす顔は貴重だ。次の瞬間、何故だか高笑いしだしたけど。


「クハハハハ」


何がそんなに可笑しいのか理解出来ない私は怪訝な顔をする。こっちは鉄臭くて苛々してるのに。


「まるで海賊だな」

「正真正銘の海賊ですけど」


まだ笑い続けている彼に嫌味を一つ零し、バスルームへと向かう。あぁ、早く血の臭いを消してしまいたい。


「何してんだ」

「いやいや、こっちの台詞ですよクロコダイルさん」


服を脱いでいたら堂々と入って来た。この人こういうところあるんだよね。


「うるせぇ、何してんだって聞いてんだよ」

「シャワー浴びるんですけど……」

「馬鹿野郎」


本当意味が分からなくて、苛々が募って、私の中で何かが切れた時、視界が反転した。


「おい!」


何が起きたのか分からなかった。まるでこの世界に来た時のような落ちていく感覚だった。ぶわぁっと、冷や汗が溢れ出てきた。


「び、びっくりしたぁ」

「チッ、こっちの台詞だ馬鹿野郎」


どうやら倒れたらしい。それを彼が抱きとめてくれた。立ちくらみにしては酷いな。貧血かな。支えてもらい体を起こしながら考えていると次は吐き気が込み上げてきた。


「……ッ」


咄嗟に口を手で覆うが、少し吐いてしまった。最悪だ。何てことだ。一体何なんだ。血の臭いを嗅ぎ過ぎた?まさか。


「First name」


彼が真面目な顔で私を見ていた。その顔は心配が滲み出ている。心配されたのは嬉しい。でも心配されたくなくて、血の臭いのせいにした。


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