10
朝、暴れる私をクロコダイルは容赦無く組み敷いた。
「いやっ!離して!」
「うるせぇ、人の話しを聞きやがれ」
「やだ!男は浮気したら言い訳するもんだって言ってたもん!それに浮気は男の甲斐性だって!」
「誰だ、そんなくだらねぇ知識を与えた奴は。それに俺は言い訳なんかしねぇ」
「マルコ!開き直るのか!?」
「チッ、不死鳥か。開き直りでもねぇよ、馬鹿。事実だ」
事実って何だ事実って。女と寝たのが事実ってことか。泣くぞ、私もう泣くぞ。
「勘違いすんな。誰も抱いちゃいねぇよ。酒呑んできただけだっつってんだろ」
「だって……」
口ごもる私にクロコダイルは疲れたように息を吐いた。
「だってじゃねぇよ。めんどくせぇな」
「う」
「仮に、俺が他の女抱いて何か文句あんのかよ」
「え」
「あんのかよ」
「……ッ、な、ない、です」
あれ、おかしいな。どうしよう、どうしよう。目が逸らせない。怖いよ。恐いよ。怖い。
「あ、あ……ッ」
勘違いしてた?あはは、勘違いしてた。やだ、恥ずかしい。勘違いしちゃってたよ。恥ずかしい、恥ずかしい。やだ、何泣いてるんだろう。あはは、はは……。
「First name」
「はい」
「泣くな」
「はい」
「First name」
「はい」
「悪い」
「……ッ」
「泣かないでくれ」
そんな、そんなこと言わないでよ。もう、辛い。辛い、辛い、辛い。[ 230/350 ][*prev] [next#]
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