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- ナノ -
09

腕の中で眠ってしまった彼女を、そっと横たえた。規則正しく胸が上下するも、どこか息苦しそうに見えた。

迷い子。風の噂で聞いた程度だったが、今目の前にいる少女がそれとは、何とも不思議な気分だ。過去、未来を知る者。本来の自分の性分だったら利用しないはずはない。しかし、彼女の口から聞いた時、そんなこと思い浮かびもしなかった。ただ、彼女が今後狙われないか不安になったんだ。

頬にかかる前髪を指先で避けてやる。白ひげのことだ。きっと息子たち以上に大事にしていたに違いない。手を出したことがばれた日には俺の命も危ういなと思わず苦笑が漏れる。

ふと思った。むしろ、今まで何故それを思わなかったのか不思議なくらいだ。こいつは俺の未来を知っているのか?最近、思い出したかのように哀しげな顔をすることがある。気にもしなかったが、まさか、そんな顔をさせるような未来がこの先待っているのか?

馬鹿馬鹿しくなった。クロコダイルは振り払うように首を振った。馬鹿馬鹿しい。俺は海賊だ。欲しいものは自分の手で奪いとる。未来なんて関係ねぇ。こいつもそれを知って何も言わねぇんだろう。

眠る彼女の額に口付けを落とし、ベッドから降りた。彼女が何か言った気がしたが、寝言だろうと気に止めずバスルームへと向かった。

ワイシャツを脱いでも女の匂いが鼻に付く。今更になって彼女が拒絶した理由に気付いた。


「くそっ」


あの日と同じ匂いだった。きっと勘違いしたのだろう。これは目を覚ました後も面倒だと溜め息を零した。

刻一刻と時間は刻まれていく。刻まれた跡を消すことはできない。なかったことにはできない。


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