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- ナノ -
06

嫌い。

その言葉の思わぬ攻撃力に戸惑いを隠せずにいた。彼女から、そんな言葉が自分に向けられるとは思っていなかった。自惚れていたのか?この俺が?


「クロコダイル様、いかがしました?」

「いや」


レインディナーズを出て向かった先は最近ご無沙汰だった夜の店だ。席に付いたのは、よく知った女だった。嫌でも女の身に纏う香水の匂いを鼻が覚えていやがる。


「ご無沙汰でしたね」

「あぁ」

「他の店の子に乗り換えたのかと思いました」


乗り換えた。まぁ、間違いじゃねぇか。苦笑を漏らし上等なワインをあおれば不意に耳元で囁かれた。俺らしくもない。心の底から不快感が込み上げてきた。


「おい」

「え」


女を押し離せば少し驚いた声を上げた。


「今日は忙しいんですの?」

「いや」


あいつの顔が脳裏に過ぎった。あいつは今どうしているだろうか。まだ拗ねて自室に籠っているだろうか。それとも、白ひげの元に帰ってしまっただろうか。そう思ったら無性に心が騒ついた。

何だって言うんだ。クロコダイルは苛立った。正しく言えば、自分の知らない感情に戸惑ったのだ。クロコダイルは絡み付く女の腕を振り払い、砂となってレインディナーズへと急いた。


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