05
あぁ、ほらやっぱり駄目だ。夜は駄目だよ。嫌なことばかり考えてしまう。無駄に広いベッドが一人だと余計に広く感じ、虚しさを感じさせてくる。
嫌なことを思い出してしてしまった。孤独だったあの数日間を。どうしよう。また、女の人のところへ行ってたら。どうしよう、女の人の香水を香わせて帰ってきたら。もう正気でいられる自信はない。
だって、今は幸せを知ってしまってるもの。もう彼の温もりを感じてしまったもの。
無意識にシーツを握り締めていた。気付かないうちにまた、涙が頬をつたっていた。
弱くなった。私は弱くなってしまった。白ひげの元にいた頃はこんなにも心を乱されることはなかったのに。
何も考えたくなくて、無理矢理眠りに落とすように堅く目を閉じた。
クロコダイルは、出て行った扉を唖然と見つめていた。何て女だ。何で、俺があんなことを言われなきゃならねぇ。クロコダイルは苛立ちを隠しもせず机に八つ当たりをした。
コツコツと指で机を鳴らしながら、しばし出て行った扉を見つめるが戻っては来ない。
「チッ」
クロコダイルは苛立ちを振り切るようにコートを羽織り、部屋を後にした。[ 225/350 ][*prev] [next#]
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