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- ナノ -
04

動けずにいた。すぐ後ろで扉の開く音がしても動けずにいた。ヒールの心地よい音がする。ロビンだ。ロビンが帰ってきたんだ。


「風使いさん?」

「……」


どうしよう。顔を挙げないと、ロビンが心配す……。べりって剥がされた。にょきって生えてきた手に、両手をべりって剥がされた。なんてことだ。傷心の乙女に対して優しさの欠片もないじゃないか。


「何してるの?」


ロビンの顔を見たら何故か、ぼろぼろと涙が零れ落ちてきた。


「おかえりなさい!」


感極まって抱き付いてしまった。きっと彼女は、困った顔をしているに違いない。


「そう、そうだったの」


ロビンの顔は実にしょうもないと言っていた。彼女の素敵な笑顔の裏には棘があることを私は知ってます。酷い、ロビンを心配して……。


「うわぁ……」


今、自分、すごく嫌な感じだった。今のは良くない。すこぶる良くない。クラスの嫌な女子って感じだった。


「ごめんなさい」

「何をあやまってるの?」

「分からないなら、その方が嬉しいです」


久しぶりに飲むロビンが淹れてくれた紅茶は、ほっとする味わいだった。

ロビンが帰って来ない事件は、一先ず解決した。ケーキは、また今度一緒に食べようって約束もした。問題はクロコダイルさんだ。

陽はすっかり沈んだというのに帰って来ないじゃないか。まったく、ロビンもクロコダイルさんも仕方がないんだから。門限作っちゃうぞ。

ロビンが戻って来て安心したのか、呑気にそんなことを考えられているのも夕食を終え、お風呂にも入り、寝る準備が整うまでだった。


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