04
動けずにいた。すぐ後ろで扉の開く音がしても動けずにいた。ヒールの心地よい音がする。ロビンだ。ロビンが帰ってきたんだ。
「風使いさん?」
「……」
どうしよう。顔を挙げないと、ロビンが心配す……。べりって剥がされた。にょきって生えてきた手に、両手をべりって剥がされた。なんてことだ。傷心の乙女に対して優しさの欠片もないじゃないか。
「何してるの?」
ロビンの顔を見たら何故か、ぼろぼろと涙が零れ落ちてきた。
「おかえりなさい!」
感極まって抱き付いてしまった。きっと彼女は、困った顔をしているに違いない。
「そう、そうだったの」
ロビンの顔は実にしょうもないと言っていた。彼女の素敵な笑顔の裏には棘があることを私は知ってます。酷い、ロビンを心配して……。
「うわぁ……」
今、自分、すごく嫌な感じだった。今のは良くない。すこぶる良くない。クラスの嫌な女子って感じだった。
「ごめんなさい」
「何をあやまってるの?」
「分からないなら、その方が嬉しいです」
久しぶりに飲むロビンが淹れてくれた紅茶は、ほっとする味わいだった。
ロビンが帰って来ない事件は、一先ず解決した。ケーキは、また今度一緒に食べようって約束もした。問題はクロコダイルさんだ。
陽はすっかり沈んだというのに帰って来ないじゃないか。まったく、ロビンもクロコダイルさんも仕方がないんだから。門限作っちゃうぞ。
ロビンが戻って来て安心したのか、呑気にそんなことを考えられているのも夕食を終え、お風呂にも入り、寝る準備が整うまでだった。[ 224/350 ][*prev] [next#]
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