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お、お、おぉおおお!
とうとうやりました白ひげ。私は黒い風を、ほぼコントロールできるようになりましたよ。うむ、鍛練したかいがあるというものだ。
平々凡々だった私が、この世界の並外れた怪物達と渡り合えるようになるなんて誰が想像しただろうか。誰も想像しなかったさ。
これも悪魔の実を食べたおかげだ。きっと食べていなかったら、私はまだ白ひげの船で平和に護られながら生きていたに違いない。
「First name」
空が赤らんできた頃、迎えが来た。砂漠の大海原で大の字に寝転んでいた私は、腹筋を使って起き上がった。
「クロコダイルさん」
ぱたぱたと体中に纏わり付く砂を払い、クロコダイルさんと正面から向き合う。
「できたか?」
「はい、ほぼ完成ですね」
「クハハハハッ、そりゃあ楽しみだな。機会でも作ってやろうか?」
「え、それは結構です。白ひげ海賊団は無駄な戦いはしないんで」
「はっ、生温いこと言いやがる」
「あはは」
生温いか……。まぁ、あの頃は今よりも温い温い温すぎる生活をしていた。そんな温い生活をも私は死ぬほど辛いとか思ってたなんて……。
何年もの月日が経っても、あの世界で生きた十八年間が忘れられない。
「帰るぞ」
「はーい」
差し出された手に手を重ね、彼の鈎爪が私を抱き寄せれば私は風に、彼は砂になった。[ 216/350 ][*prev] [next#]
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