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バナナ鰐のいる水槽を眺めている彼女の瞳は自分が知っている漆黒の真珠のような輝きはなく、色褪せて何を映しているのか分からないものだった。

男みたいな格好ばかりしていて、最近では鍛練だと言い砂まみれになっていた彼女。砂にまみれた姿は、まるで自分が彼女を支配しているようでクロコダイルの独占欲をより掻き立てていた。気分は悪くなかった。

娼婦のように染めて傷んだ髪とも違う、金持ち女の手入れの行き届いた髪とも違う、海で生きてきたからこそ潮風で毛先の傷んだ髪も自分に馴染む気がしていた。きっと長く伸ばせば彼女を栄えさせるだろうと思っていた。

見た目とは違い、実は華奢な肩や、体を売る女と違った柔らかい筋肉、そのくせ腹回りに付いた肉も触れば柔らかく抱き心地は良い。

男装をしても隠しきれない時のある、彼女の胸がクロコダイルの中の男を度々、揺さぶっていた。

クロコダイルは確かに彼女に惹かれていた。最初は白ひげの女クルーだと興味本意だったが、何故か自分になついている彼女を傍に置いておくのは悪い気はしなかった。

ただ、彼女もニコ・ロビン同様、否それ以上に掴みどころがなかった。彼女の能力そのままのように、捕まえたくても風のように指の隙間を通り抜けていく。

自分が下手に出るのは嫌だった。一回り以上も歳の離れた女だ。見た目だけなら十代に見える時もある。そんな小娘に無理矢理抱くならまだしも、自分からすり寄るわけにはいかない。この俺のプライドが許さない。

殺せと言われた時は本当に殺してしまおうかと思った。自分の下で苦痛に顔を歪ませ涙を流す彼女はさぞかし自分を欲情させてくれるだろう。

しかし、できなかった。そして、また彼女に選ばせた。彼女が自分から離れないと知っていて。

彼女と同じベッドで夜を過ごす度にクロコダイルは自分の中の欲が増していくのが分かった。

それは想像以上に苛々するもので、彼女に冷たく当たることで解消していた。自分を見て揺れる彼女の瞳が堪らなかった。優越感に浸れた。

そんなある日、彼女の様子がおかしくなった。髪を短剣で切ろうとした。苛々が止まらなかった。自分の気に入っているものを、それが本人だろうと壊されるのは許せなかった。

もう堪えられなかった。むしろ何を堪えていたのだろう。自分はクロコダイルだ。彼女に欲が放てないなら他の女で済ませてしまえば良い。

思い立ったクロコダイルは、その夜街に出た。そこで出逢った娼婦が意外にも具合が良く、今まで我慢していた分、そしてこれから先のことを考え、満足いくまで欲を放ってきたのだった。

クロコダイルは後悔した。


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