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05

いつもより早くレインディナーズに戻る。私は足速にクロコダイルの執務室へと向かった。


「あ?何だ、今日は早ぇじゃねぇか」


社長椅子に座りながら書類に目を通していた彼は顔を挙げて私を見た。

普段の私なら、クロコダイルさんが顔を挙げてくれただけで嬉しくて、どんなに疲れていても笑顔で「ただいま」を言うのに、今の私にはそんな余裕はない。

私は目当ての物を探して部屋を忙しなく見渡す。クロコダイルさんもそんな私に異変を感じたのか書類に視線を戻すことなく、私を眺めていた。


「ない、ない、ない」

「何探してんだ、てめぇは。騒々しい」

「クロコダイルさん、ハサミ。ハサミありませんか?」


少し食い付き気味に聞けば彼は眉間の皺を深くさせた。


「あ?んなもんねぇよ。ミス・オールサンデーなら……」

「あぁ、どうしよう。どうしよう、どうしよう」


クロコダイルの言葉もそこそこに私は頭を抱えた。その姿は異様だったに違いない。


「あ」


私は気付いた。気付いてしまった。自分の腰にぶら下がっている短剣に。

何だ、そうだ。これで切れば良いんじゃないか。わざわざハサミじゃなくても、これで……。

私は短剣を鞘から抜くと反対の手で伸びた忌々しい髪を鷲掴んだ。

あぁ、これで、これで、弱くならなくて済む。

目を閉じた。弱い私と二度目のさよなら。


「おい」


振り下ろしたはずのそれは、ぴくりとも動かすことができなかった。

あれ、おかしいな。

目を開ければ、間近にクロコダイルさんがいた。彼の目に怒りの色が見えた。


「え」


どうして?私、強くなろうとしてるんだよ。

どうして、邪魔するの?


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