02
岩の一角が砕け散った。いや、消えたという表現の方が相応しいだろう。
「何だ、今のは」
「え、えへっ」
「あ?」
「すんませんした」
砂漠の何処か。クロコダイルさんに付いて来ただけだから正確な位置は分からない。まぁ、とにかく砂漠で私はクロコダイルさんに実力を見せていた。
きっと彼の暇潰しだろう。
「クッ、クッハハハハ!面白ぇ、やるじゃねぇか、First name」
久しぶりに聞いたクハハハ笑い。ご機嫌麗しくて良かったです、はい。
「あ」
「あ?」
「いえ」
やばいやばい、クロコダイルさんに名前呼ばれちゃった。いつも「おい」とか「てめぇ」とか酷い時は「ん」だったから、あぁ、やばい。嬉しいです。
「コントロールはできていないようだな」
「はい。でも、これでもだいぶ良くなってきた方なんですよ」
岩を消したのは私の黒い風だ。
「はじめは感情が昂ったらでるようになって、しかも制御不能だったから自分まで刻まれちゃいましたし……」
あれから自分の意思で出せるように鍛練しまくりました。といっても手のひらに渦ができるように、ただじっと集中してただけ。
「能力者は能力に溺れやすい。だが、能力は技を磨けば磨くほど力を手に入れることができる。鍛えて損はねぇ」
あぁ、そんなこと確か漫画でも言ってた気がする。
「よーし、完全にコントロールできるように頑張っちゃお!」
「頑張るのは良いが、これから俺が乗っとる国を消すなよ?」
「なっ!」
ひどい、そこまでノーコンじゃないし!
それから私はクロコダイルに一泡吹かせてやろうと心に決め、朝から晩まで適当な砂漠で鍛練しまくった。
久しぶりに男の格好をする時間が増え、上昇しはじめていた女子力が低下していったのだった。[ 202/350 ][*prev] [next#]
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