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20

背中に冷たくて固い感触。痛みなどもはやこの体は感じない。それは悪魔の実の所為か、はたまた……。


「First name!お前がいながら何やってるんだよい!」


胸ぐらを掴み上げて私を壁に叩き付けているのはマルコ。締まった首に気道がヒュッと音を漏らす。

アイちゃんが叫んでくれたおかげで、あの後すぐに皆が駆け付けてくれた。サッチは今緊急処置中で生死をさ迷っている。

私は雨に打たれ、ただ立ち尽くすことしかできなかった。


「マルコやめろ!First nameが悪いんじゃねぇだろ!」


エースが間に入り私からマルコを引き離そうと奮闘するがマルコは私を睨んだままだ。胸倉を掴んだ拳が小刻みに震えていた。


「くそ!お前がいて、何でアイが……ッ」


あい?愛?アイ?

え、何それ、何のこと?意味わからない。あ、アイちゃん?アイちゃん気絶してただけでしょ?大したことないんでしょ。

サッチのことならまだしも、何でアイちゃん?

ねぇ、マルコ。私、駄目だった?私、やっぱりここに来た意味なかった?

ねぇ、マルコ。私、勘違いしてた。マルコに私も「大丈夫かい?無事で良かったよい。よく頑張ったな」的なこと言われるかなって思っちゃってたよ。

あぁ、マルコにとって私という家族よりアイちゃんていう大切な人ができたんだね。良かったね。


「マルコ隊長、First nameを返して下さい」

「その手、離せよ」

「いくら隊長でも、それ以上First nameちゃん苛めたら……」


赤黄緑。


「許さねぇ」


レッド、イエロー、グリーン。

口を揃えて言ったその言葉に涙が溢れた。レッドの背中にすがり付いて泣きじゃくる私をただただイエローとグリーンが頭を撫でてくれた。

あぁ、もうだめ。

翌日の夜。

昨日から降り続いた雨は強さを増し、今もなお降り続いていた。


「白ひげ」


寝室で眠る白ひげの大きな背中。


「白ひげ……ッ」

「……」

「今までお世話になりました。勝手ながら私は、私は、この船を下ります」

「……」

「白ひげ、もし、もし私が戻ってくることがあったら、あなたは私をまた娘だと言ってくれますか?」


おなたは、お帰りって言ってくれますか?

返事はない。私は伝う涙を拭うことはせず少ない荷物を背負い嵐の中、船を飛び出した。

もう無理だった。耐えられなかった。まだサッチは目を覚まさず危ない状態だった。このままサッチが死んだら、私はなんのために?

結果を知りたくなくて逃げ出した。

私を責めたマルコの目は私をもう必要としている目じゃなかった。

耐えられない。もう、あの船は私の居場所じゃないんだ。あの子が来た時に既に私の、あの船での物語りは終わってたんだ。

だから、唯一の私の居場所を求めて、彼に最後の賭けをして、私は彼に会いに行った。


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