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ほら、やっぱり。そんなことだろうと思ったよ。

甲板の中心には敵の生き残りがアイちゃんの首筋にナイフを当てていた。つまり人質。


「こ、この女がどうなっても良いのか!?」


何てベタな台詞。敵の男をぐるりと囲んだ白ひげ海賊団。はっきり言って男に勝ち目はないのだが、皆無暗に飛び出せない状況にある。


「First name、どこ行ってたんだよ」

「ちょっと」


いまいち緊迫感に欠けるイエローが私を見つけ声を掛けてきた。


「ねぇ、何で皆動かないの?」

「まぁ、一応人質取られてるしな」

「ふーん」


ここにいる奴らなら人質を取られていようが簡単にあんな男倒せるだろうに。


「ねぇ、アイちゃん」

「ひっ……」


ひって可愛いな、おい。でも海賊は可愛いだけじゃ駄目なんだよ。


「な、何だお前!こ、こいつ殺すぞっ!」

「殺せば?」

「え」


唖然とする男。イエローには「言い過ぎ」と肘で小突かれた。


「だって、この船には簡単に人質になるようなクルーいらないし」

「そ、それでも仲間を何よりも大事にする白ひげ海賊団か!?」

「はぁ?そんなの噂でしょ?それに別にその女は仲間でも家族でもないし」


私は一歩一歩男の元へ近付いて行く。


「ねぇ、アイちゃん。白ひげやマルコが認めても私は認めないよ」

「……ッ」

「この船に乗るなら覚悟を見せて」

「か、覚悟?」

「そう覚悟。この世界で、生きていく覚悟。いつまでも、あの世界を引きずってんじゃねーよ」

「……」

「お前は今どこにいる」

「……私は、私は」

「覚悟を私に見せろ」

「私は、私は……この世界で生きたい!この船で!白ひげ海賊団の仲間に!家族になりたい!だから、だから助けて!」


充分だった。


「よしきたぁああああ!」


皆を奮い立たせるには充分すぎる言葉。クルーたちが雄叫びのような声を挙げれば、あっという間にアイちゃんは救出された。

あの子に対し、認めていないという気持ちを持っていたのは私だけではなかった。

この世界で生きていくという覚悟のない奴なんて認められない。命を預け合う仲間、家族なら尚更だ。そんな奴に命なんて預けられない。


「First name、ありがとよい」

「マルコ隊長にお礼言われることじゃないよい」

「フッ、真似するなよい」


マルコの穏やかな笑みが久しぶりに私に向けられた。

覚悟。

あんな偉そうなこと言っておいて、私は覚悟なんてできているのだろうか。

ただ、生きなきゃならなかったんだ。ただ、強くならなきゃいけなかったんだ。

あの世界から私は逃げた。そんな私に覚悟なんてあった?逃げ道だったんじゃないのだろうか。


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