09
宴が執り行われた。私の宴なわけがない。あの子の宴だ。あの子はマルコの背に隠れながらクルーに声を掛けられる度にビクついている。
私の中であの子と呼ばれる対象がナナちゃんからアイちゃんに変わっていることに私は気付かない。
「あはは、First nameちゃんとは大違いだね」
「何が言いたいんだね、グリーン」
グラスに口を付けながら隣のグリーンを横睨みすれば、あの子を楽しそうに眺めていた。
「まぁ、確かに。First nameは、あんな女々しくなかったもんなー」
「うんうん、今も昔もFirst nameは男らしい」
「イエロー、まじでそれ貶してるでしょ」
にやりと笑った顔が、からかう気満々だったからその場から離れることにした。
「エースー」
「あっはっはっはっ、First nameー!呑んでるかー!?」
「エースほどは呑んでないけど、まぁ呑んでる」
「そーか、そーか!あっはっはっはっ!」
ダメだこりゃ。出来上がっちゃってますよ。次、行こ。次はマル……は、ないから……あ、ティーチだ。ティーチにしよー。
「ティーチさーん」
「ゼハハハハハッ。First name、てめぇのポジション奪われちまってんぜ?いいのかっ!?」
「……」
なんてオブラートに包まれてない言葉なんだろう。さすがティーチ、ぐさっときたー。
「ゼハハハハハッ、図星か!」
「むぅ」
「俺ぁ、おめぇのが好みだぜぇ?」
「何それ、セクハラ」
「ゼハハハハハッ、相変わらずひでぇなぁ!」
ティーチと話している間、ずっと視線を感じていた。あの子の視線。何を言いたいかは分かる。ティーチだもんね。
ティーチのせいで全てが変わってしまったんだから。
それでも、今はまだ考えていたくないの。きっと、あなたには分からない。[ 189/350 ][*prev] [next#]
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