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医務室から初めて出たそこは、船の上とは思えないほどの長く、しかも広くて天井の高い廊下があった。
日本の一般女性の平均身長である私に比べ、見上げるほど高い身長と壁とまではいかないが広いマルコの背中に隠れるようにして私は歩いている。
やはり海の上ということで多少、浮遊感に近い揺れがあり真っ直ぐ歩くのが大変だった。
「おい、ふらふらするなよい」
そう言って私の手を握ってくれたのは優しさか……否、違うな。ただ単に早く船長室に行きたいだけだろう。
きょろきょろ辺りを見渡すが、長い廊下なだけあって同じ景色に私はすぐ飽きてしまった。
しかも誰一人にもすれ違わないのは何故なのだろうか?たしか船員は大勢いたはず……。
「着いたよい」
目の前の扉は今廊下で見てきた扉の倍以上の大きさがあり私は思わず口を開けて見上げてしまった。
なるほど、この廊下のスペースの広さも船長室の扉の大きさも『白ひげ』対策というわけか。
私は白ひげが、どのくらい大きいのか胸を膨らませ、同時に恐怖で締め付けられた。
「親父、マルコだよい」
礼儀正しく扉を鳴らして名乗れば、中から低い声で返事が返ってきた。
「おう、入れ」
その声を聞いた瞬間、体が硬直したかのように動かなくなった。が、未だに手を繋がれている私はマルコに言葉通り引き摺られるように船長室に入れられた。[ 18/350 ][*prev] [next#]
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