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19

渇いた砂の香りが私を包み込む。首筋に当たる冷たい感触が、背中から感じる彼の温もりが私の鼓動を加速させる。


「え、あれ、なんで?」

「クロコダイル!?」

「クハハハハ!コブラ。うちの馬鹿が世話になったみてぇだなぁ」


彼は笑っていたけど頭上から感じる彼の気配は苛立ちを含んでいる。


「君の知り合いだったか」

「まぁな……おい、帰るぞ」

「え、私……帰るの?」


戻るんじゃなくて、帰るって言ってくれるの?彼の何気無い一言に私の心が軽くなる。なんて単純なんだろうか。


「チッ、何言ってやがる。てめぇが決めろ。帰りたくねぇなら好きにすりゃあ良い」

「か、帰る!」


裾を翻し背を向けた彼のコートを慌てて掴む。


「一緒に、帰りたい……です」


絞り出すように言った言葉に彼の雰囲気が柔らかくなった気がした。


「……勝手に出て行くんじゃねぇ」


再び彼に包まれれば彼は砂となり、私は風になる。重なり合ったそれは、まるで身体が彼の一部になった気がした。


「邪魔したな」

「お茶、ごちそうさまでした」


二人が姿を消したそこを呆然と皆が見つめていた。


「彼が、あんな顔をするとは……」

「まさか、クロコダイルの?」

「これは驚きですな」


国王が口火を切れば皆が口々に驚きの声を漏らし、ざわめいた。


「皆の者良いか。今見たことは他言無用だ」


国王は苦笑した面持ちで言う。


「彼にもプライバシーがあるからな」


まさかクロコダイルが、あんな温和な空気を出せるとは思ってもいなかった。


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