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17

久しぶりに握り締めた短刀の柄。手に馴染むそれに笑みが溢れる。


「風波裁て」


わらわらいた群衆が地面に割れ目を残し二つに切り裂かれる。運悪く波に当たった者たちからは血が噴き出していた。


「なにもんだぁああ!?」


私が何者でも別に良いじゃないか。そんなに、いきり立つなよ。弱く見える。


「風刃」


短刀の刀身に鋭い風が巻き付き、長さを増す。構え直し、風に乗った。背中を押してくれる風だけが私を支えてくれた。

まさに風の如く、過ぎ去り痕を残す。地に倒れし者たちは幾つもの切傷を刻み込まれていた。それは、まるで……。


「鎌鼬」


鞘に納めれば、風が止んだ。息を潜め見守っていた町の人々の歓声が沸き起こる。

悪い気はしない。でも嬉しくない。皆で戦っていたのに今は一人で戦っている。何のために戦っているの?何のために人を傷付けるの?何のために、私は……。


「見事な戦いだった」

「あなたも能力者のようですね」


チャカとペル。王家の敵を討ち滅ぼす者なり。あなたたちには、きっと戦う理由があるのね。


「初めまして。ペルさん、チャカさん。私は、あなたたちの味方ではありません。でも、あなたたちの敵になるつもりもありません。全ては風の赴くままに」


紙の上の二人よりも誇りという想いが痛いほど伝わってきた。それは今の私には眩しすぎた。

背負ったはずの白ひげの想いを裏切り、何をしているだ私は。



「フッ、面白い。では、後始末は私がやろう。ペル、王宮に連れていってくれ」

「いいのか?」

「きっと、国王様は喜ぶだろう」

「……」


チャカの提案に顔をしかめるペル。しかし、諦めたように息を吐くとペルが私に近付いてきた。


「名は?」

「風」

「そうか。いつかも国民を救ってもらった。礼を言う」

「あー、別に……」


前は下心があったし、今もただのストレス解消だし、礼を言われるほど正当な理由で戦っていない。


「ぜひ、王宮にいらして下さい。国民を護ってくれる方には国王は礼を述べたい。そういうお方だ」

「……」


良いのか悪いのか、全く判断できなかったが、行く当てもないため付いて行くことにした。

ペルに背中に乗ってくれと言われたが、そこは好奇心を抑え込み断固拒否した。頑張った。


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