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「そういえば、嬢ちゃん。名前、なんてぇんだ?」

「え?」

「だから名前だよ。なーまーえ」

「あぁ、First name」


医務室のベッドの上で船医さんと一緒にとる朝食。実に美味いが朝からこの量は多すぎる。そして今更ながら聞かれた名前に少し戸惑いながらも答えた。


「へぇ、First nameか。あ、そういや今、航海士と隊長がFirst nameを島へ送るために進路変更してるらしいぜ」

「え?」

「何だ?」


まずいまずい、まずい。もう船は出航しちゃってるの?私どこの島出身でもないし、まずいまずいまずい。

あぁ、私はいったいこの世界で何をすれば良いの?いったい何のために私は、この世界に……。

ふと脳裏に過ったのは豪快に笑う一人の男の顔。

流れに身を委ねるのも確かに一つの手だし、いつも私がそうしてきたのも本当のことだけど、もし知らない島にこのまま置いていかれたら……。


「あ、あと飯食い終わったら親父がFirst nameに会いたいだってさ」

「おやじ?」

「あぁ、この船の船長……エドワード・ニューゲートだ」


ニヤリと笑った船医の顔に呆然とすることしかできなかった。

そうか、運命もそれを願っているのか。

自分から何もしなくても運命の方から近付いてくるんだね。

私に選択の意思は必要ないの?


「……」


神がそれを望むなら、その運命とやらに私を身を委ねるしかないのか……。


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