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02

一ヶ月、一ヶ月という月日が経とうとしていた。相変わらずロビンは私を風使いさんと呼び、クロコダイルとの会話は今や皆無。

誰も私の名前を呼ばないから私が私なのかさえ分からなくなってきた。

彼の前に立つと汗水流れる程緊張する。もう、一種の恐怖症に近い。

何がこんなにも怖いのか。きっと彼がクロコダイルだから。彼に好意を抱いているから。だから怖い。怖くて怖くて仕方ない。

どうやら私は、また弱くなったみたいだ。


「おはようございまーす」


朝、私は起床すると身支度を済ませロビンのところへと向かう。身支度とは、海賊時代の男らし格好ではなく、ましてやここに来た当初着せられた白いワンピースでもない。

ラフなシャツに、ちょっとお洒落な七分丈のスラックス。そしてピカピカの革靴。床をコツコツ鳴らす革靴は結構お気に入りだ。


「おはよう、風使いさん。今日は早いのね」

「あはは……」


私は知っての通り朝が苦手である。今、現在もである。いつも時間ギリギリなのだが、今日は違った。

まぁ、そんな日もある。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


ロビンから温かい紅茶を受け取り今日の日程についての打ち合わせが始まる。

大抵は「いつも通りお願いね」と言われティーカップが空になるまで他愛ない話をする。


「じゃあ、そうゆうことでお願いね」

「うぃー、じゃなくて、はい、分かりました」


あ、出た。くすくす笑い。

ぐへって顔をしていたらロビンが身を乗り出して顔を覗き込まれた。


「な、何でしょう?ミス・オールサンデー」

「顔色が悪いわ」

「え」


全くの無自覚なのですが。


「しっかり食事摂ってる?随分、少食みたいだけど」


ここに来てから食生活、完璧偏ってます。朝はロビンが淹れてくれた紅茶だけだし、昼はまぁ食べて、夜は、うん、まぁ少々。

だって夕食はクロコダイルと一緒なんだもん。緊張して食べ物なんか喉に通りません。


「風使いさん?」

「あっ、全然大丈夫っす。体調管理ぐらいできますので、ご心配なく」

「そう。無理はしないでね」

「はい」


心配されるのが何だか、こそばゆい。


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