16
深夜だというのに、きらびやかに輝くピラミッド。そして、その上にはバナナワニ。
そう、バナナワニ。
「……すっげぇ」
ぽかーんと見上げたまま目が離せなくなってしまった。あ、やばい、首痛い。
「風使いさん、こっちよ」
「……はーい」
風使いさんって、名前では呼んでくれないのね。
裏口らしい場所から中に入れば真っ直ぐ延びる一本の廊下。真っ白な壁は、まるで精神病棟のようだ。
「クロコダイルさん、まだ起きてるんですか?」
「フフフ、心配いらないわ」
立ち止まったのは大きな扉の前。
「ここが社長の執務室よ」
「……」
鼓動が早くなる。緊張しすぎて息がし辛い。あぁ、白ひげに初めて会った時を思い出す。なんだ、成長してないじゃん。
「社長、連れてきました」
部屋は無駄に広かった。部屋に入り正面に壁はなく水槽のガラス張りになっていた。そして、その前にポツンと置かれた机と言葉通りの社長椅子。
「ご苦労、ニコ・ロビン」
「その名は呼ばない約束では?」
「……」
椅子を回転させたそこにいたのはクロコダイル。
あぁ、やばい。
「風使いさん、あなたもよ。ここではミス・オールサンデーで通ってるの」
「え、あ、はい。どうもその節は申し訳ありませんした」
クロコダイルに釘付けだった私は慌ててロビンに頭を下げた。
「クハハハ、歓迎しよう。風来のFirst name」
「……」
「白ひげのところから逃げ出したなら、行く場所がないんだろう?」
「……ッ、別に逃げ出したわけじゃない」
逃げた。確かに逃げ出した。でも、他人に言われるのは嫌。
「まぁ、そう睨むな。まさか風来のFirst nameが女だとはな。否、まだ女にもなってない少女か?クックックッ」
あぁ、馬鹿にされてる。てか、相手にされてない。うわぁ、やっぱダメか。年の差きついか。
恋愛に発展しないことを悟った私は溜め息を溢す。良いように使われて終わり、か……。そりゃそうか。四年間一緒にいるロビンさえ信用してないんだもんね。
あぁ、寂しい、な。[ 156/350 ][*prev] [next#]
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