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ずぶ濡れで店の正面から入ってきた私を見て、店長は慌てて駆け寄ってきた。
「First nameちゃん!どうしたんだい!?これじゃあ、まるで……」
まるで、あの嵐の日のようだね。
私を拒絶した彼。どこの誰かも分からない奴に、そもそも彼が気を許すわけがないじゃないか。
彼は誰一人信じないで生きているのに。
「クロコダイルさん。私は、あなたの味方ではありません」
「……」
より眉間の皺を深くした彼の鋭い眼差しが私を見つめる。彼の瞳に自分が映っている。それだけで私の心は満たされていく気がした。
「でも、あなたの敵にはならない」
だから、あなたを助けさせて頂きます。
「……!」
有無を言わさず彼を風で包み込み、レインディナーズへと向かった。
初めて見る実物に、いつもの私なら何かしらの反応を見せていただろうが、今は目にも入らない。
彼を抱えたまま店に入れば店員たちが、ぎょっとした顔で駆け寄って来た。
私は風盾で周囲に空間を作り銃を構えた。
「……えっと、副社長?じゃないか、確か……支配人?を出せ」
「ななななな何を!この方をどなたとお思いですか!?」
「七武海、サー・クロコダイル」
「わ、分かっていて、あなた……」
「うるさい、さっさと支配人出……」
「呼んだかしら?」
店の奥から透き通る声が聴こえてくる。
あぁ、彼女が……。
「ニコ・ロビン」
彼女の顔が明らかに強張ったのを私は見逃さなかった。
まずい、禁句だった。
私は風盾の範囲を広げ、盾内に私とクロコダイルそしてロビンだけの空間を作った。
「すみません。呼びつけてしまい」
私は銃を下ろした。円状に発生している風盾内に入れば風の音で中の声は外に漏れない。
「クロコダイルさんをよろしくお願いします。信用してお任せできるのがロビンさんしかいなくて……」
「あなたは……」
「それでは」
私は、ちらりと彼を見た。膝を付いた状態だが、服が既に乾き始めており、復活するのも時間の問題だろう。
「クロコダイルさん。雨の日は外出しないで下さいね」
心配で心配で、眠れなくなってしまうから。[ 151/350 ][*prev] [next#]
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