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09

その日は朝から天気が優れなかった。ポツリポツリとしかいない客。暇すぎてカウンターで突っ伏していたら店長に「今日は、もう上がって良いよ」と言われた。

何だか体も怠かったからお言葉に甘えて上がらせて頂くことにした。

階段を上る途中にある窓。不意に空を見れば厚い雲で覆われていた。

いつもなら暑いほどの陽射しが入ってくる自室も今日は陰っている。窓の下にあるベッドに重たい体を投げ出した。


「はぁ……」


何だろう。体がだるい。足が重い。腰が重い。お腹が痛い。胸が苦しい。


「あ、生理か」


謎解明。だが分かってしまうとさらにだるい。だるい体を動かして俯せになって片手を下ろす。ベッド下に押し込んである鞄を引っ張り出した。

ごそごそと漁って目当ての物を取り出す。


「……これしかない」


ピルケースに入った数粒の薬。生理の重い私のために、わざわざドクターが調合してくれたんだ。


「来月からどーしよ……」


しばらく錠剤を見つめた後、先のことを考えても仕方がないと溜め息を零し、生理用品を買いに行くために体を起こした。

財布を持ちベルトを装着してマントで身を包み、裏口からそっと店を出た。

腰に掛かる重みに安堵する。

この世界に来てすぐ、生理用品があることに驚愕したのを今でも覚えてる。そして涙が出るほど感激した。

這いつくばりそうな程、だるくて重い体を引きずりながらナースのところに行った。お腹が痛くて痛くて、しかもクルーなんか男しかいないから誰にも言えなくて半泣きだった。ナースがいて心から安堵したんだ。


「あ」


ポツリと肩に落ちたそれ。雨だ。雨が降るのは、あの嵐の日以来。

強く降ってくる前に帰ってしまおうと速足になった時、聴こえてきた喧騒と歓喜の声。


「え?」


雨足は強くなる。震える心。聴こえてきた歓喜の声を疑う。


「クロコダイル様!」

「クロコダイル様が来て下さったわ!」


嘘でしょ。雨だよ?雨なのに、どうして?

彼の元へと駆け出した。

彼にやっと会える嬉しさ。でも今はあなたのことが心配で仕方ない。

体のだるさなんて忘れた。


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