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足がすくんで動けない。情けない、情けなさすぎて泣けてくる。

殴られたり蹴られたり、斬りつけられたり、撃たれたり、そんな惨状には慣れた。

でも、いつもとは違う恐怖。女だから?私が女だから?こんなことに怯えるの?

一つ何かを越えて幾度に新たに立ち塞がる壁。


「いやぁああああ!」


女の叫び声に我に返る。どこから、と辺りを見渡せば髪を捕まれ無理矢理立たされた全裸の女性がいた。

反射的に掴んだナイフ。柄を握った手が震えている。誤魔化せない恐怖。


「First name、下がれ!」


レッドが私の体を後ろに押す。そして叫び声を上げた彼女を救出した。


「何、ボーッとしてんだよ!」


掴まれた手首にビクリと肩を揺らせばエースが険しい表情をしていた。


「え、エース……」

「戦えないなら船に戻れ。俺はゲレツを潰す!」

「ちょっ!ゲレツは一億べ……」

「関係ねぇ!マルコはヒキョウを相手にしてる、だから俺がやる。俺は逃げねぇ!」


駆け出して行くエースの背を見送る。見送ることしかできない。

危うい存在だと思った。何故、君はそんなにも危ないラインにいるの?

私は、私は……。

震えが止まらない。私は、役に立たない。今、ここで私は足を引っ張る存在でしなかない。

私は、逃げた。

何も見たくなくて、何も聞きたくなくて、風になり私は消えた。

甲板に突如巻き起こった風の渦。皆が、そこを囲む。


「First name!戻ったのか!?状況は!?」


膝を付く私に駆け寄って来たのはサッチ。私は顔を挙げることができなかった。

逃げ帰った私が、どんな面をすれば良い?


「おい、First name?どうし……ッ!?」


伸ばされた手。肩に触れた瞬間、手を払い私は飛び退いた。

手が、怖かった。手が、あそこにいた男たちの手に一瞬、見えた。

汚ないと思ってしまった。


「First name?」

「や、やだっ!」


触らないで、触らないで触らないで、触らないで!

瞼の裏に焼き付いて消えない彼女たちの姿。

ねぇ、いったい何をされたの?ねぇ、どんな酷いめにあったの?ねぇ、……犯されたんでしょ?

込み上げてくる嘔吐感に耐えられず、そのまま意識を飛ばした。


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