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想像していた荒んだ光景は広がっていなかった。しかし異様なほどの静けさに、背筋に寒気が走る。
「嫌な予感がするねい」
白ひげの命により島に降り立ったのは一番隊。つまりマルコ隊長の隊であり、そこに属する私もいる。ちなみにエースもいる。
「家屋にも人はいません。随分と放置されてたようですよ」
偵察してきた先輩クルーたちの情報にマルコは腕を組み「そうかい」と言ったまま黙ってしまう。
「マルコ隊長、この先に海賊たちが占拠している屋敷があるようです」
「海賊の名はヒキョウ海賊団。船長はイクジ・ナシ。7500万ベリーの賞金首です」
「それに船長のイクジよりも金額が高い一億ベリーのゲレツがいます」
7500万ベリに一億って、私より賞金額が遥かに高いじゃないか。でも。
「First name……」
「嫌です」
何を言わんとするのか察した私はマルコの言葉を遮り拒否する。ちらりと、マルコの顔を伺えば、深い溜め息を溢された。
「行くよい」
「うっしゃぁああああ!」
一番隊の気合十分な声が拳とともに空に突き上げられた。私も久々の戦闘に心が踊っていた。しかし、その惨状を知った瞬間、血の気が失せ、情けないことに目を逸らすこともできなかった。
「First nameっ!お前は見るな!」
屋敷に入ってすぐ、レッドの手が私の視界を覆った。しかし、指の隙間からそれは見えてしまった。
下劣な顔をして笑う男たちの足元に跪付く女たち。半裸、全裸状態の女たちが男たちの股間に顔を埋めていた。
何をしているかなんて言われなくても分かる。分からない程、子どもでも無垢でもない。
吐き気がする。胃の底から何かが込み上げてくる。
「……うっ」
「First nameっ!?」
肩を抱いたレッドに「大丈夫」と伝え体を離す。
「何だぁ?お前ら」
「白ひげ海賊団、一番隊。近くに寄ったついでに、お前らヒキョウ海賊団……潰させてもらうよい」
マルコの瞳が怒りで揺らいだ。その言葉を合図に皆が雄叫びを上げ拳を掲げた。[ 136/350 ][*prev] [next#]
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