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エースが白ひげ一家に馴染むのも、期待されるのもあっという間だった。今まで末っ子な上に妹だとちやほやされてた私は何疎外感。つまりは面白くない。
今日は風呂掃除をさせられていた。しかも一人で、この広い風呂場を一人で。なぜならば、この前寄った島で単独行動をしたからだ。
特に絡まれることもなく船に戻れば何やら、がやがやしていた。近くにいたクルーに話し掛ければ「First nameがいたぞー!」って叫ばれ、何が何やら分からぬうちにマルコに差し出され鉄槌を落とされた。
思い返してみれば誰にも出ていくことを伝えることなく船を下りたわけで、所在不明の私を皆が探し回ってくれたらしい。
申し訳なさと、心配された嬉しさと、そしてモヤモヤ。なんだ、このモヤモヤ。
「よっ、First name!」
「エース」
眩しすぎる笑顔で登場したエース。肩にブラシを担いでる。
「手伝ってやるよ」
「別にいいし」
「まぁまぁ遠慮すんなって」
止める間もなく、ブラシがけを始めたエースの背中を眉間に皺を寄せて見つめる。
モヤモヤする。すごくモヤモヤする。すっきりしない。なんだろう。歯車が回り始めたからかな。何だか、未来に良いことが思い浮かばない。
「浮かねぇ顔してるなぁ」
夜、甲板の真ん中で大の字に寝転がり空を眺めていると星が消えた。代わりに現れたパイナップル、じゃなかった。
「マルコ」
「隊長だ」
「失礼、マルコ隊長」
隣に腰を下ろしたマルコも空を仰ぐ。
「どうしたんだい?」
「別に、どうもしないんですけど……なんか」
「なんか?」
モヤモヤする。
黙っていると、私がその先を話す気がないと察したらしく溜め息を吐き話題を変えた。
「お前、エースに男だと思われてるよい」
「思わせとけば良いよい」
「真似すんなよい!」
「いてっ」
久しぶりのマルコとの軽いやり取りに、ちょっとだけ靄が晴れた気がした。[ 134/350 ][*prev] [next#]
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