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夢は見なかったと思う。ただ目を開けた瞬間、見慣れない木目調の天井に戸惑った。

体を動かそうにも違和感を感じて腕を見れば、刺さっている点滴針に目眩がした。

体に針が刺さってるとか、今まで大きな怪我や病気とは無縁だった私にとっては、ありえない体験で屈辱的でもあった。

ここでドラマや映画みたいに、かっこよく針を抜けたら良いのだが生憎私はそんな勇気も大胆さも持ってはいないので、どうにか動ける頭だけで周りを見渡した。

どうやら、ここは医務室らしい。まぁ、自分が寝かされているのだから当たり前のことなんだが、何よりもこの病院独特の匂いが教えてくれた。

私、生きているのか。

そう確信した瞬間、フラッシュバックのように血塗れの光景が過る。そして襲ってきた嘔吐感に体をくの字にして口元を押さた。


「……ッ!」


「おいおい、大丈夫か?嬢ちゃん」


忙しなくベッドに近づいてきた白衣を来た男に顔をしかめながらも私は嘔吐感に気を取られた。


「気持ち悪いなら吐いちまえ」


そう言って顔の前に出された桶にすがり付きながらも私は首を横に振った。

人前で吐くとか有り得ない。そんな恥さらしはごめんだ。

微かな女のプライドに私は意地でも吐かないと気合いを入れて唇を結ぶ。が、それは白衣の男が私の背中をさするという優しさにより決壊した。


「うぇええええええ」


終わった。私の女としての人生終わった。


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