×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
19

目が覚めた。別に寝苦しかったわけじゃない、嫌な夢を見たわけでもない。ただ自然と目が覚めた。

ベットから下りれば、ひんやりとした感覚が足の裏から伝わってくる。

裸足のまま廊下にでれば、これまたばったりマルコに遭遇。


「何してるんだよい」

「マルコこそ、もしかして夜這い!?」


バッと両手で自分を抱き締める。


「アホか」

「えへへ」

「……眠れないのかい?」

「ん」

「来いよい」


マルコの背中に付いて行く。どこに行くのか、すぐに分かった。甲板だ。きっと今夜もすばらしい星空に違いない。

ほらね。

見上げた空は、まるで落ちてきそうなほで満天の星。


「飛んで行くなよい」

「あはは、今晩はやめとく。風も少し強いしね」


バンダナのない髪を風が靡かせる。この世界に来た時ほどではないけど、少しだけ伸びた髪。また、この髪を伸ばす時は来るのかな。


「First name、大丈夫かい?」

「何がですか?」

「遠い目をしてるよい」


そう、かな?遠い目、してるかな?


「お前を見付けた時、お前ひでぇ目してなぁ」

「そりゃあ……ね」


あの時は、酷かった。あまり思い出したくない。今でも、思い出したくない。


「First name?」

「あ、ごめん」


無意識に掻き抱いた体を離す。頭を振って大丈夫だと口の端を上げた。


「殺してくれって言われてんだと思ったんだ」

「……」

「だから、お前を助けた」

「何だそれ」

「世界で一番不幸みてぇな面しやがってよぉ。……見せてやりたかったんだ」

「……」

「見れたかい?」


マルコが何を見せたかったかは何とかく分かる。でも……。


「んー、どうだろう」

「へっ、何だい」


マルコが拗ねた。口を、への字にしたマルコうける。


「もっと見たい。もっと見せて。この素晴らしく自由な世界を」

「……まかせとけぇ」


私がいた世界なんかより広い広い広いこの世界で私はこれから、どれほどのものを見て聴け触れられるのかな。

良いことばかりでも、楽しいことばかりでもないけれど、私にとっては大切な世界。

大丈夫、きっとこの先、私が知っている以上の哀しい残酷な未来が待ってるかもだけど……。

優しく風が私を包み込む。

家族がいる。


[ 119/350 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]