19
目が覚めた。別に寝苦しかったわけじゃない、嫌な夢を見たわけでもない。ただ自然と目が覚めた。
ベットから下りれば、ひんやりとした感覚が足の裏から伝わってくる。
裸足のまま廊下にでれば、これまたばったりマルコに遭遇。
「何してるんだよい」
「マルコこそ、もしかして夜這い!?」
バッと両手で自分を抱き締める。
「アホか」
「えへへ」
「……眠れないのかい?」
「ん」
「来いよい」
マルコの背中に付いて行く。どこに行くのか、すぐに分かった。甲板だ。きっと今夜もすばらしい星空に違いない。
ほらね。
見上げた空は、まるで落ちてきそうなほで満天の星。
「飛んで行くなよい」
「あはは、今晩はやめとく。風も少し強いしね」
バンダナのない髪を風が靡かせる。この世界に来た時ほどではないけど、少しだけ伸びた髪。また、この髪を伸ばす時は来るのかな。
「First name、大丈夫かい?」
「何がですか?」
「遠い目をしてるよい」
そう、かな?遠い目、してるかな?
「お前を見付けた時、お前ひでぇ目してなぁ」
「そりゃあ……ね」
あの時は、酷かった。あまり思い出したくない。今でも、思い出したくない。
「First name?」
「あ、ごめん」
無意識に掻き抱いた体を離す。頭を振って大丈夫だと口の端を上げた。
「殺してくれって言われてんだと思ったんだ」
「……」
「だから、お前を助けた」
「何だそれ」
「世界で一番不幸みてぇな面しやがってよぉ。……見せてやりたかったんだ」
「……」
「見れたかい?」
マルコが何を見せたかったかは何とかく分かる。でも……。
「んー、どうだろう」
「へっ、何だい」
マルコが拗ねた。口を、への字にしたマルコうける。
「もっと見たい。もっと見せて。この素晴らしく自由な世界を」
「……まかせとけぇ」
私がいた世界なんかより広い広い広いこの世界で私はこれから、どれほどのものを見て聴け触れられるのかな。
良いことばかりでも、楽しいことばかりでもないけれど、私にとっては大切な世界。
大丈夫、きっとこの先、私が知っている以上の哀しい残酷な未来が待ってるかもだけど……。
優しく風が私を包み込む。
家族がいる。[ 119/350 ][*prev] [next#]
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