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「お、お前ら、ここを誰のシマか知らない訳じゃなかろう?」

「ギャハハハハ!こいつまだ言ってやがるぜ」

「あぁ、もちろん知ってるさ。ここは『白ひげ』のシマだろ!」

「『白ひげ』の縄張りと知っていながら愚かな……」

「言ってろ、シジイ。白ひげがどうした!あ?俺らがこの島を襲って一週間、あいつらは助けに来る気配すらねぇじゃねぇか。なぁ?」

「そーだそーだ!こんなちっぽけな島!白ひげにとっちゃあ、どうでも良いんだよ!」


繰り広げられる会話。膜が張ったように聞き取れない代わりに自分の呼吸が妙に大きく聞こえる。

肩で息をする私の視線の先にあるのは手を伸ばせばすぐ届く距離にある剣。

駄目だ、殺される。このままじゃ私、死ぬ。殺らなきゃ、殺られるんだ。

固まっていた体が動き剣に触れた瞬間、今まで色褪せていた景色が一気に色付き、聴覚も視覚も澄み渡った。


「う、うぁああああああ!」


喧嘩の仕方なんか知らない。ましてや人の殺し方なんて……。それに剣だって初めて持ったし、私に大の男五人に勝てる勝算は一ミリもなかった。

ただ、気持ちだけが先走っていた。

私の突然の行動に反応できなかった真っ正面にいた男の首もと、頸動脈を斬りつける。

頭の中で誰かが、しきりに言うんだ。

心臓は狙い難いから首を切れって、だから私は首を切った。

天に突き上げるように吹き出した血飛沫を全身に浴び右左の男を仕留める。

我に返り向かって来た背後の二人の男をも殺そうとした時、私の体は限界を超えた。

込み上げて来た嘔気を抑えきれず、手で口元を押さえたまま異臭を放つそれを吐き出した。

そして糸が切れたかのように力が抜けた体は容赦なく地面に打ち付けられ私は血溜まりの中、意識を飛ばした。

最後に視界の端に映った鮮やかな蒼に心を奪われて。


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