02
うおっと。
ななちゃんにハグされた。感極まったらしい。そこにナナちゃんの恋人であるシャンクス登場。
「おい、お前。ナナから離れろよ」
「はぁ?やだ」
今にも剣を抜き出しそうなシャンクス。何だか面白くて、ちょっと調子に乗ってみた。
ナナちゃんの肩を抱いてみたり。
おーおーおー、すっげぇビリビリする覇気だなぁ、おい。
「ちょっ、シャンクス待って。First nameちゃ……」
「しー」
唇に人差し指を当て、わざと顔を近付けた。
ちょっ、おい、何顔を赤くしているんだ。
「お前……」
あ、やべ。まじギレかい?
たらりと冷や汗を流した時……。
「やめなさい!」
ななちゃんの鉄槌がシャンクスに落ちた。
おお、すっげナナちゃん。
「な!?浮気しといてなんだその態度は!」
頭を擦りながらナナちゃんを指差すその姿は何ともマヌケで、ちょっぴし幻滅した。
「浮気って……First nameちゃんは女だから!」
「は?」
「そーでーす。私こーみえて女でーす」
はらりとバンダナを外しニヤリと口の端を上げた。
「な、な、……」
「赤髪、騙されたなぁ」
呆けた顔したシャンクスの後ろから現れたのは酒瓶片手に、ほんのり頬を赤く染めたマルコ。
「あ、マルコ」
「隊長だよい」
「おっと、失礼。マルコ隊長」
いつもの会話をする私とマルコをシャンクスは慌ただしく見比べている。
「シャ……赤髪のシャンクス船長。先ほどは失礼致しました。私、白ひげ海賊団一番隊First nameと申します。以後、お見知りおきを」
頭を下げた私にシャンクスの顔も引き締まった。
「ナナは時折、海を見ながら寂しそうな顔をしていた。遠い世界の家族を、友を思い出していたのかと思ったが、どうやら違ったようだな」
柔らかく笑ったシャンクスは素敵だった。思わず見とれていたら隣から「惚れんなよ」と小突かれた。
あら、意外とナナちゃん嫉妬深いのね。
「さぁね」と、こそっと言えば「は?」って顔したナナちゃん。うける。
「シャンクスさん、私たちには想う家族も友もあの世界にはいませんよ。ね?」
「……うん」
気まずそうに頷いたナナちゃん。シャンクスの真っ直ぐな目がナナちゃんを捉える。
光があれば影は誰にでもあります。だから私にも、ナナちゃんにも影があるんです。[ 102/350 ][*prev] [next#]
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