×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
17

静まり返る船上。空は今にも泣き出しそうだ。

爪がくい込むほど握り締めていたナイフを彼女の喉元に当てている。

動こうとした赤髪海賊団を彼女は制止した。


「ナナちゃん」

「うん」

「……ッ、ナナちゃん!」

「うん」


真っ直ぐ私の目を見つめる彼女の瞳から強い意志が伝わってくる。

あの世界にいた彼女とは違う、明らかに。それはそのはず。守られていたにしろ彼女が、この異世界で三年間生き抜いたことは私同様事実なのだから。

私はナイフを力無く下ろし鞘に閉まった。

両の手のひらを見つめる。


「ねぇ、見て」

「え?」


彼女が、どこを?と首を傾げていることなんて知らずに私は自分の手のひらを見つめたまま、もう一度呟いた。


「見て」

「……」

「見てよ、ほら」


どうやら彼女は私が自分の手のひらのことを言っていると気付いたらしく視線を下ろす。


「きっと、ナナちゃんには見えない」


私の手のひらは三年前よりも皮が厚く、ところどころにタコの跡がある。もう、女の手じゃない。


「私の手、真っ赤でしょ?」

「……ッ」


彼女は息を呑む。


「ねぇ、血だらけなの。真っ赤なの。もう消えないの。これが私の罰。ねぇ、誰のせいか分かる?ねぇ!」

「わ、私のせい……」

「そうだよ。ナナちゃんのせいだよ。ナナちゃんが私を呼んだんでしょ?」


無言で頷くナナちゃん。それは肯定を意味する。

神の言った言葉は嘘じゃなかったんだ。


「この世界に来て初めに見たモノは何だと思う?あぁ、ナナちゃんは赤髪の船に空からでも降って来たんでしょ?」


もう頷くことしかできないナナちゃん。私もそれだったらどんなに良かったことか。そしたら私の手は赤く染まることもなかったのかもしれない。


[ 97/350 ]

[*prev] [next#]
[目次]
[]