16
交じわるのは、あの赤髪のシャンクスの剣。重い覇気なんか今の私には感じない。震えている体なんて知らない。
「どけよ!赤髪!」
「どくことはできない」
「チッ」
舌打ちした私はシャンクスから視線を逸らし、その背に隠れた女を睨み付けた。
「お前、よくも……よくも!」
私は後ろに飛び退き、まだナイフを握り締めたままツカツカと距離を縮める。
白ひげは私を止めない。だから大丈夫。私は、間違ったことしてない。
「お前」
私の狙いが女だと分かった赤髪海賊団の皆が彼女の周りを固める。
「白ひげ、何故止めない」
赤髪は白ひげの方を見た。白ひげは笑って言った。
「グララララ、好きなようにさせてやれ」
ほら、やっぱり私は間違ってない。
彼女をしかと見据える。イライラするのは事実。なのに、込み上げてくるこの感情はなんだろう。
「ナナちゃん!」
「へ」
三年振りに聞く声、確かに彼女の声。
「赤髪の姫になったんだね。ただ、守られるだけの女に」
刺々しく放たれる私の言葉。彼女は制止する赤髪海賊の人たちの手を払って前に出てきた。
「ナナ」
彼女を庇うように前に出たシャンクス。
「大丈夫、シャンクス」
彼女の言葉に渋々赤髪は身を引いたが私を睨む視線は動かない。
「三年間何をしてた?」
「あのね」
「なぁ、何してた?どうせ、ぬくぬくと赤髪の傍で笑っていたんだろ?」
「待っ……」
「聞きたくない!」
「……ッ」
聞きたくない聞きたくない聞きたくない。彼女の愛の物語りなんて聞きたくない。
三年経った今、私はまだ愛を求めてる。それは、あの世界にいた時から何一つ変わってない。[ 96/350 ][*prev] [next#]
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