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08

一瞬の空白、意識が自分のもとに戻った時、気持ちの良い浮遊感にまだ夢の中にいるのかなと思った。直後、耳鳴りとともに背中に衝撃が走った。


「……ッ!?」


声にならない痛みに私は体を竦め瞼を堅く閉じた。

肺が圧迫される感覚に呼吸が一時的に止まり酸素を無意識に求めて金魚のように口をぱくつかせる。次第に聴覚が戻り、周りの喧騒を捉えたと同時に私の肺は酸素を受け入れた。


「はぁはぁはぁはぁ……ッ」


乱れる呼吸に未だに脳は始動せず、自分の陥っている状況が全く把握できないまま上半身を起こせば視界に映るそれらに私は目を奪われた。

白黒の映像ならば夢だと思う。が、今私の目が捉えているのはカラーとは言い難いが確かに色付いた世界だった。

男、男、男。とにかく汚らしい男共が悪どい顔を浮かべ剣を振り回し銃を片手に暴れ回っている。

な、何これ。

意味が分からないと首を振り、どう見ても冗談とは思えない光景に恐怖した私は上半身だけ起こした格好のまま後退りした。


「ひっ!」


不意に触れた片手に慌てて振り返ってみれば、そこにあったのは人間だった、モノ。

足が変な方向へ向き、片腕のないそこからは血が滴り、目は白眼を剥き、だらしなく開いた口からは涎と血が伝い、眉間に開いた真っ暗な穴が死を物語っていた。

恐怖で失禁したのであろうアンモニア臭に鼻を片手で多い、あまりにも衝撃的すぎるそれに込み上げてくる嘔吐感を無理矢理抑え込んだ。

怖い怖い怖い怖い、怖い。

心身共に恐怖感に襲われた私は無意識に立ち上がり駆け出していた。


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