05
存分に再会をはたしたらしい二人はやっと三人の元へやって来た。どうせなら、そのまま城に行ってほしかったと三人は内心思っていたが、心に留めておくことにした。キースが煩いからだ。
「やぁ、諸君。久しぶりだな」
「言っとくけど私とディナは、確か一昨日会ったばかりよ」
本から顔も挙げずに言えば大袈裟な返事が返ってきた。ヘルは後悔した。
「何を言っているんだ、ヘル。僕にとってディーナと離れた一日は一年に感じるほど長いのだよ!」
「アホか」
思ったことをベラが代弁してくれた。
「そう言うベラ、君だってアトラスと離れている時間は長く感じるだろ?」
「……べつに」
間を開けて答えたベラ。そうだと言っているようなものだ。アトラスが本で顔を隠しながら声を堪えて笑っていた。それに気付いたベラの顔が見る見るうちに赤く染まっていく。
女戦士も所詮、恋するお姫様かとヘルは溜め息を零した。
「キース!覚悟しろ!」
「ははは、やるか?ベラ」
剣を抜いたベラに余裕を見せ微笑するキース。ディーナは瞳をキラキラさせて顔中から期待が溢れ出している。一方、アトラスはパタンと本を閉じた。ヘルは、ちらりと視線だけをアトラスに向ける。
「キース、掠り傷一つ付けたら許さないですよ」
「僕はそんなミスしないさ。さぁ、始めようベラ」
剣の交じ合う音が青空の下で響き渡った。
アトラスとベラは婚約している。来るべき日が来たら二人は神の下で誓いを結ぶのだろう。また、キースとアフロディーナの婚約も近いだろう。誰がどう見ても二人の仲は恋仲だった。[ 7/46 ][*prev] [next#]
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