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04

とうとうアフロディーナが駄々を捏ね始めた時、馬の蹄の音が聞こえてきた。それに気付いたのはヘルだけのようで、隣のうるさい妹の頭を鷲掴んだ。


「きゃっ、何するのお姉様!?」

「あはは。それ以上ディナの頭が悪くなったらどうするんです?ヘル」

「アトラス、あんたねぇ」


爽やかな笑顔で毒を吐くのがアトラスの怖いところで面白いところだとヘルは思っていた。一方ベラトリクスは呆れたようにアトラスを見た。


「キース、来たわよ」

「え、本当!?」


アフロディーナは瞳を一層輝かせて東狭間の森の入口を見つめた。すると数分後、愛馬である白馬に跨ったキースが現れたのだった。アフロディーナは満面の笑みを浮かべてキースの方へ駆け寄って行った。その後ろ姿をヘルもまた笑みを浮かべながら暖かく見守っていたのだった。


「相変わらず、ヘルの聴覚は素晴らしいですね」

「ありがと」


アトラスの感心したような声に気にした風もなく、再び本に視線を落とす。


「あぁ!愛しのディーナ!見ないうちにまた綺麗になったかい!?」

「キース!会いたかったわ!」


感動の再会の抱擁を交わしている二人に読書組みは全く見向きもせず、ベラは愛馬と共に胡散臭い視線を向けていた。

ヘルはありきたりな恋愛小説のワンシーンを繰り広げる二人に内心反吐が出そうだった。またキースに関しては、お前はいったい幾つだと突っ込んだのだった。

残念なことは、溶かしたマシュマロよりも甘い二人を止める術を、三人は持っていないことだった。


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