03
ユリウスは見た目こそはシリウスに瓜二つだったが、その愛嬌のある笑みや活発で好奇心旺盛な性格から、シリウスには全くといって似てはいなかった。
「ユリウス、談話室で待っていてくれるかしら?着替えをすませたら行くわ」
「僕、談話室より庭の方が良いな!」
「そう。じゃあ、そこで私はちょっと遅めの朝食を、ユリウスは甘いお菓子を食べましょう」
そう言えばユリウスは花が咲いたかのように笑顔いっぱい広げ、大きく頷いた。
「お姉様、私が準備しておくわね」
「ありがとう」
ベッドから降りれば見計らったようにシシーが一礼しながら入ってきた。
「ヘル様、おはようございます。整容の準備ができておりますが……」
「えぇ、お願いするわ。ディナ、あとでね」
「はい、お姉様」
アフロディーナはユリウスの手を引いて出て行った。その背中が何故だか遠い存在に感じてならなかった。
「ヘル様?」
「あぁ、ごめんなさい。シシーお願い」
まだ起きない頭を降って洗面台へと向かった。冷たい水に顔をつければこの鈍間な頭も少しは動いてくれるだろうかと期待をして。
「ヘル様、南の王子を先ほど見かけました」
「……そう」
「あまりあのお方には近づかぬ方が……」
「シディアス」
「……申し訳ありません。口が過ぎました」
シディアスの言っていることは正しかった。ヘルの性格からしてシリウスに会えば余計に辛くなることは目に見えているのだから。主をどこまでも思うシディアスの優しさに少しだけ胸が軽くなった。
「今日は白が良いわ」
「承知致しました」
ヘルは好んで白を身につけなかった。誰が言ったわけでもなく白はアフロディーナの色だったから。
でも、何故だか今日は白を身につけたかった。少しでも妹の強さに縋りたかったのかもしれない。[ 43/46 ][*prev] [next#]
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